人的要件とは

運送業許可を取得するためには、事業者に属する人について満たさなければならない条件が大きく4つあります。詳しく見ていきましょう。

1.運行管理者を選任すること

運送業の営業所には、車両台数に応じた運行管理者を選任する必要があります。

 

選任された運行管理者は、整備管理者と兼任することはできます。ただし、ドライバーとの兼任や他営業所の運行管理者との兼任はできません。

新規許可申請の場合は、申請時に確保できなくても「確保予定」で申請することはできますが、実際の営業を開始するまでには選任しなければなりません。

 

運行管理者とは

運行の安全確保に関する業務を事業者に代わって行い、交通事故を防止する責任者です。つまり運送業における司令塔的役割を持つということです。

 

具体的には、ドライバーの乗車割の作成や指導監督、点呼による疲労・睡眠健康状態の把握、休憩・睡眠施設の保守管理も含まれます。法令では、事業者は運行管理者に対して、その業務に必要な権限を付与しなければならないと定められています。

運行管理者になるには

運行管理者になるには次のいずれかの方法があります。

 

@運行管理者試験に合格すること

試験は年2回(3月と8月)実施されます。「旅客」と「貨物」に分かれており、「貨物」の運行管理者になるためには、次のいずれかの受験資格を満たす必要があります。

 

貨物運送事業の運行管理補助者の実務経験が1年以上
運行管理者基礎講習(貨物)の修了

 

A実務経験と講習受講

具体的には、5年以上の実務経験および年1回の運行管理者講習を5回以上受講することです。

 

実際は、「@試験合格」で運行管理者になる方がほとんどのようです。

 

選任する運行管理者の人数

営業所に配置される車両台数により選任する運行管理者数が次のように決まっています。
・0 〜29台  1名
・30〜59台 2名
・60〜89台 3名
・90台以上は、30台ごとに1名追加

 

運行管理“補助者”について

運行管理補助者は運行管理者を補助する役割で、選任は義務付けられていませんが、実質的には必要になります。

 

なぜかというと、点呼は運行管理者か運行管理補助者しかできないため、運行管理者の不在時は運行管理補助者が点呼をとる必要があるためです。運行管理者が行う点呼は、総回数の少なくとも1/3以上を実施することが法令で定められています。逆に言うと、補助者は、運行管理者が休みの時などに点呼の2/3までを取ることができるのです。

例えば、5台のトラックがあり月間24日の稼働の場合、1日1台あたり始業時と終業時で2回の点呼がありますから、2回x5台x24日=240回の点呼が月間で発生します。このうちの2/3である160回までは補助者が点呼を取ることができるということになります。

補助者になるためには3日間の運行管理基礎講習を修了することが必要です。

2.整備管理者を選任すること

運送業の営業所には、整備管理者を1名以上選任する必要があります。

 

選任された整備管理者は、運行管理者との兼任、ドライバーとの兼任は可能です。ただし、他営業所の整備管理者は兼任できません。

 

新規許可申請の場合は、運行管理者同様、実際の営業を開始するまでには選任しなければなりません。

 

整備管理者とは

自動車の点検・整備に関する専門的な知識・技能を持つ責任者です。

 

具体的にはドライバーに日常点検を実施させたり、定期点検などの実施計画を作成・実施したり、車庫の管理などをします。

 

整備管理者になるには

整備管理者になるには次のいずれかの方法があります。

@整備士の資格を有する者

1級、2級または3級の自動車整備士の資格を取得していること

 

A2年以上の実務経験+整備管理者選任前研修

実務経験

自動車整備工場や運送会社での点検・整備の経験も含まれます。また、運送会社に勤務したことのあるドライバーは日常点検を行っているはずなので、実務経験として認められます。その証明として、勤務していた会社に「実務経験証明書」に必要事項を記載してもらいます。

 

整備管理者選任前研修

半日のこの研修は、各県の運輸支局で概ね2か月に1度開催されますが、予約がすぐに埋まってしまうので早めに申し込みましょう。

3.必要人数の運転者を確保すること

運送業許可を取得するためには、5台以上の車両が必要になりますので、ドライバーも5人以上確保する必要があります。新規で許可申請する場合は、申請時点では「確保予定」でも構いません。

 

ただし、日雇いドライバーや2か月以下の雇用契約ドライバーなどは認められません。

4.欠格要件に該当しないこと

事業主及び役員全員が、欠格事由に該当しない必要があります。主な欠格事由は次のようになります。

 

●1年以上の懲役または禁錮以上の刑を受けた場合、その刑の執行が終わってから5年を経過していない
●運送業(一般貨物または特定貨物)の「許可取消し」を受けた場合、取消しの日から5年を経過していない
●未成年者または成年被後見人