運送業許可を取得するうえで、もっとも重要であり、要件を満たすことの確認にも苦労するのが場所的要件です。大きく3つの要件に分けられます。
具体的には、営業所(事務所)、車庫(駐車場)、休憩・睡眠施設の設置が必要で、それぞれの施設に細かい要件があります。これらをすべてクリアしないと許可がおりませんので、細心の注意が必要です。
使用権原があるか、関係法令に抵触していないか、適切な営業所であるかを確認する必要があります。
使用権原とは、自己所有の場合でも賃貸借の場合でも、その権利がある証拠のことです。
具体的には、自己所有の場合は建物の登記簿謄本が、賃貸の場合は賃貸借契約書(契約期間が2年以上または契約満了時に自動更新となるもの)のコピーが必要になります。
賃貸アパートの場合は、「居住専用」などではなく、事務所として利用可能かが契約書に記載されている必要があります。いずれの場合も、賃貸契約書にその旨の記載がない場合は、誓約書等で代用することができます。
主に、都市計画法と農地法の規定に該当しないか確認します。詳しくみていきましょう。
この法律では、日本全国を、@市街化区域、A市街化調整区域、Bその他に分けています(本来はもう少し細かいのですが、ざっくり分けました)。
市街化区域はさらに13の地域に細分できますが、そのうち、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層専用地域、田園住居地域である場合は、原則として営業所の設置はできません。第2種中高層専用地域の場合は、1500u以下で2階以下なら可能です。その他8地域は可能です。
市街化調整区域内の場合、原則として建物は建てられませんので、難しいです。
上記@でもAでもない場合は、可能です。
検討している土地が@〜Bのどの区域なのかは、市町村役場で確認できます。
市街化区域は、街を良好な状態に整備するために、13の地域ごとに建築できる建物や用途を細かく定めています。逆に市街化調整区域は、農地や緑地の保全が優先され、建物の建築が規制されている地域です。
営業所の土地の登記簿に記載されている地目が「田」や「畑」の場合は農地転用の許可手続きを経て「宅地」にする必要があります。ただし、農地転用は必ずしも許可されるわけではありませんし、許可見込みがあったとしても許可までは時間がかかります。
そのため、手間と時間を考えると、農地でない土地がスムーズです。ちなみに、許可の見込みがあるかは市町村に確認します。
建築基準法や消防法に抵触していないことが必要です。
営業所(事務所)として業務をするのに、机と椅子、パソコンは必要でしょう。面積についての規定はありませんので、最低限これらの備品が収まるスペースがあれば、「適切な」営業所と考えられます。
次は車庫(駐車場)の要件についてです。車庫と営業所はセットになるという考え方になります。また、営業所1つにつき、車庫が2つでも構いません。詳しく見ていきましょう。
営業所と併設することが原則となりますが、併設できない場合、四国運輸局管内(高知、愛媛、香川、徳島)は営業所との直線距離が5 q以内であればOKです。
車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50p以上確保され、かつ、計画車両数すべてを収容できる面積であることが必要です。
変更申請書には参考値として、普通車38u、小型車11uと記載されていますが、あくまで参考値であり、実際に配置する車両の面積(車検証記載の長さx幅)の前後左右が50p確保されていればOKです。
他の用途に使用される部分と明確に区画されていることが必要です。例えば、私用車や軽貨物自動車の駐車スペースは明確に区画します。具体的にはロープやコーンなどを設置します。
「営業所」の使用権原と同様です。自己所有の場合は建物の登記簿謄本が、賃貸の場合は賃貸借契約書(契約期間が2年以上または契約満了時に自動更新となるもの)のコピーが必要です。
賃貸契約書に契約期間に関する記載がない場合は、誓約書等で代用することができます。
車庫の場合、営業所とは異なり市街化調整区域でも可能です。ただし、登記簿の地目が「田」や「畑」は農地なので不可です。農地転用許可を取得する方法もありますが、許可が出るとは限りません。
車庫出入口部分の道路幅と使用する車両の車幅について、道路幅員証明書により車両制限令に適合することを確認する必要があります。道路幅員証明書は、国道の場合は不要で、県道・市町村道は各自治体で取得します。
道路の必要幅員は、道路の種類や車幅によって変わってきますので注意しましょう。